実は藤原伊織作品を読むのは本作がはじめて。『テロリストのパラソル』さえ読んでません。なので、テロリストのパラソルと本作との関連はわからないのでした。また、敵に隙がありすぎてぬるいんじゃないか、幼馴染パートって実はそんなに重要じゃないんじゃないか、世間が狭すぎるんじゃないか、などということを思ったりしましたが。そういうのを全部すっとばして、広告代理店の仕事をリアルに描いている小説として感動しました。
いや、「こんなに筋を通しすぎる会社員って実在しないだろう」「新人たちがあまりにも優秀すぎるだろう」「人はまっすぐで、とりまく環境だけが理不尽なの?現実ってそうでもないんじゃない?」とも思うのですが。そういうのもこの際、すっとばすのです。
プレゼン準備の描写のリアリティがものすごいのです。私が新卒で就職したときの最初の仕事は、数社コンペでのボードプレゼンの準備作業だったのですが、そのときのことを思い出してしまいました。自分は戸塚や平野みたいに優秀じゃなくて、気が利かず、使えない奴だったのですが。
ラストも、単純にがんばったらがんばっただけ報われる、というような終わり方をしないところが良いです。そうそう、そういうことって実際あるんだよね、とうなずいてしまいました。
現実には辰村や立花みたいな上司はいないし、戸塚のような部下もいない。でも、もしかしたら彼らに近いことを自分もできるかもしれない。明日も会社に行こう、という気になります。